肝胆膵・移植外科学/小児外科学講座
Hepato-Biliary-Pancreatic Surgery and Transplantation / Pediatric Surgery

肝胆膵・移植外科学/小児外科講座について

八木 真太郎
八木 真太郎
金沢大学医薬保健研究域医学系 肝胆膵・移植外科学/小児外科学教授
金沢大学 肝胆膵・移植外科 科長、臓器移植センター長

ご挨拶

2020年12月に金沢大学医薬保健研究域医学系肝胆膵・移植外科学教授を拝命いたしました八木真太郎でございます。

当教室は2021年4月からは肝胆膵・移植外科学/小児外科学講座となり、同時に附属病院に新しく設立された臓器移植センターのセンター長を兼任することとなりました。

私の前任地の京都大学と金沢大学とは世界で初めて膵全摘や右葉切除を行なった本庄一夫先生(下図)が金沢大学第二外科教授から京都大学教授として異動された歴史もあり、強いご縁を感じます。

本庄一夫先生

金沢大学の肝胆膵・移植外科領域における伝統と矜恃

金沢大学の外科学教室は歴史的に肝胆膵外科領域において本邦を牽引してきました。

1941年に金沢医科大学(後の金沢大学医学部)第一外科教授に着任された久留勝先生(のちに大阪大学教授)は本邦初の膵頭十二指腸切除を行いましたし(1946年「二三複雑なる腹部内臓手術例」として日本外科学会に報告)、旧第二外科の本庄 一夫(いちお)教授(のちに京都大学教授)は金沢大学において本邦初の肝門部胆管癌における肝切除を施行されました。三輪 晃一教授は上腸間膜動脈(SMA)合併膵頭十二指腸切除手術の開発や生体肝移植の導入を果たされ、太田 哲生(てつお)教授が継承し発展させております。

また当教室は日本膵切研究会 (永川宅和名誉会長、太田哲生会長)日本胆膵病態・生理研究会 (永川宅和名誉代表世話人、太田哲生代表世話人)の事務局を有しております。

このような金沢大学肝胆膵・移植外科の伝統と矜持を大切にしながら、最先端の低侵襲手術や生体肝移植の血管再建技術を取り入れた革新的な肝胆膵外科、あるいは肝胆膵手術を応用した肝移植手術に邁進して、これからも世界に発信して参りたいと存じます。

今後の肝胆膵・移植外科学/小児外科学講座の目標

今回、金沢大学の外科系講座(旧第一外科、旧第二外科)は心臓血管外科学、呼吸器外科学、肝胆膵・移植外科学/小児外科学、消化管外科学/乳腺外科学の4講座に再編されました。

腹部外科領域に関しましては、稲木教授と共同で若手外科医の育成を行い、先進的な外科教室を構築していきたいと思います。

小児外科領域に関しましては、鼠径ヘルニアなどの一般手術から新生児外科、悪性固形腫瘍、肝移植などの高難度手術に至るまで全ての小児外科疾患に安全で質の高い医療を提供して参りたいと思います。

そして講座内の垣根なく、自由な発想で臨床・研究を行なっていきたいと考えております。

金沢大学の連携病院は北陸三県(石川県、福井県、富山県)及び神奈川県に38施設あり非常に広域に渡っておりますが、今まで以上に連携病院との前向きな協力体制を目指したいと考えております。

金沢大学関連施設の高度技能修練施設

肝胆膵外科学会が定める 金沢大学外科関連の修練施設(*)は現在、以下の5施設です。

  • 金沢大学附属病院(施設A)
  • 石川県立中央病院(施設A)
  • 富山県立中央病院(施設A)
  • 福井県立病院(施設B)
  • 福井県済生会病院(施設B)
*修練施設とは?
日本消化器外科学会専門医制度指定修練施設に認定されており、かつ高度技能指導医あるいは高度技能専門医が1名以上常勤している病院のうち、1年間に高難度肝胆膵外科手術を50例以上行っている施設を修練施設(A)、30例以上行っている施設を修練施設(B)としています。

今若手の外科医へのメッセージ

若手外科医には「外科医10年目」位までに自分の専門性、深く突き進めていく「方向性」を決め、「外科医15年目ごろ」位までに「自信を持って(自分の領域の手術は)出来るような外科医」を目指して欲しいと思っております。

高難度な外科領域は手術技術そのものだけではなく、手術戦略も非常に大切です。

「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」と孫子の言葉にもある様に、しっかりと病態を把握すると同時に、自分の腕前(skill)を把握することにより(正しい自己評価)、戦略を練り上げることにより安全な手術が可能となります。従って若いうちは「技術をレベルアップすること」と「判断力を養うこと」に貪欲になって欲しいと考えています。

一方で、全ての医師が「技術を習得出来る機会に恵まれる」というわけではありません。しかしどの様な状況にあってもそのような技術を習得できる環境に自らを置く努力は必要だと思います。そして手術技術や臨床的な力だけでなく学問的にも、自分から世界に何かを発信できる力を身につけることも意識していただきたいと思っております。

肝胆膵外科において生体肝移植の技術習得は大いに役に立つものであると思います。

生体肝移植を応用した血管(門脈、動脈、肝静脈、下大静脈)合併切除・再建により他施設で救命できない患者さんを救うことができる可能性が大いにあります。

当教室は患者さんの安全性を担保しつつ、若手外科医の育成を重視しており、現在のスタッフの多くが肝胆膵高度技能専門医や内視鏡技術認定、移植認定医の取得者です。

今後も私たちは責任を持って、志高い若手外科医を世界水準の肝胆膵外科医として育成したいと思っています。そしてそのためには、積極的に国内外への留学も推奨したいと思っております。一般的な手術から高難度な手術まで習得していただける様に、新しい金沢大学外科へ外科を志す先生が来ていただけましたら幸いです。

肝胆膵・移植外科医として修練したい先生は中沼 伸一(医局長)(s-nakanuma@staff.kanazawa-u.ac.jp)までご連絡ください。

北陸と縁のない方や見学だけも大歓迎です!

金沢大学 肝胆膵移植外科 Twitterアカウント

大学院研究

肝胆膵癌の研究(癌と免疫、活性型血小板の役割、患者由来同所性腫瘍移植モデル:PDOXを用いた癌の個別化医療、サルコペニアが癌再発や進展に及ぼす影響など)に加え、広範肝切除の肝再生・虚血再灌流障害、肝類洞閉塞症候群、肝移植に関する研究を行っております。

医工連携プロジェクトで「4K3Dビデオ顕微鏡」も研究開発してきました 。


研究課題

  • 膵癌個別化治療のための血小板を利用した新たなバイオマーカーの確立(科研費 基盤C 2022-2024 研究代表者:牧野勇)
  • β-catenin / CBP 阻害剤が肝切除後の肝再生に与える影響に関する研究(科研費 若手研究2022-2023 研究代表者:蒲田亮介)
  • 膵癌における三次リンパ様構造(TLS)の役割解明と治療への応用(科研費 若手研究2022-2024 研究代表者:髙田智司)
  • 個別化医療の臨床応用を目指した胆道癌同所移植マウスモデルの開発(科研費 研究活動スタート支援 2021-2022 研究代表者:髙田智司)
  • スーパーマイクロサージャリーを用いた胆道癌PDOXマウスモデルの確立(科研費 挑戦的萌芽 2019-21 研究代表者:八木真太郎)
  • 臓器移植・造血幹細胞移植におけるHLAエピトープに基づく新規バイオマーカー開発(科研費 基盤B 2021-23 研究代表者:八木真太郎)
  • 肝類洞閉塞症候群に対する早期診断のためのバイオマーカーの確立と新規予防法の開発(科研費 若手研究 2020-23 研究代表者:大畠慶直)
  • 血行性転移における活性化血小板を基軸とした自然免疫回避の解明(科研費 若手研究 2020-2022 研究代表者:岡崎充善)
  • 小児がん治療の致死的合併症である肝中心静脈閉塞症候群の病態解明と新規治療法の開発(科研費 若手研究 2019-21 研究代表者:酒井清祥)
  • 抗腫瘍剤抵抗性獲得のための癌細胞による血小板貪食に関する検討(科研費 若手研究 2021-23 研究代表者:野村皓三)
  • 肝再生促進療法の開発
  • 門脈血行動態と肝再生
  • 腸内細菌と肝再生、拒絶、感染症に関する研究
  • 虚血再灌流障害と癌転移、浸潤
  • MDSCsと癌免疫・免疫寛容

大学院生として研究したい方も、中沼 伸一(医局長)(s-nakanuma@staff.kanazawa-u.ac.jp)までご連絡ください。


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