小児外科

対象となる疾患と治療

鼠径ヘルニア

俗に脱腸といわれている病気ですが、お腹に力が入った時などにふともものつけね(そけい部)やしばしば陰嚢まで腫れることで気がつきます。
脱腸は、腫れていてもすぐに戻り痛がらないときはかまいませんが、ときに赤く腫れ上がって泣きわめくことがあり、この状態を"かんとん(嵌頓)"といいます。これは脱出した腸がポケットの入り口で締め付けられて戻らなくなってしまう為におこります。同時にミルクを吐いたり、顔色が悪くなったりすることもあります。
このような時にはできるだけ早く脱出した腸をお腹に戻す必要があります。
自然に収まってしまうことも多いようですが、それでもだめな時には小児科や、小児外科専門医に連れていく必要があります。
ヘルニアがしょっちゅう出ている場合は早めに外科手術が必要です。

精索水腫・陰のう水腫

この病気は、睾丸(こうがん)を包んでいる膜の間に水がたまる病気であり、生まれたすぐの赤ちゃん、特に未熟児に多くみられます。 陰嚢のしわがなくなってちょっと青みがかってはれますが、触っても痛がらず大きさも変化しません。また暗い所でペンライトなどで光をあてると透けてみえます。陰嚢水腫の水は1歳までは自然に治ってしまうこともあります。まれにそけいヘルニアを合併することがあります。
ただし、幼児期になって陰嚢やそけい部が腫れてくるときは、水腫がおなかとつながっていて腹水が出入りしていることがあり、この場合は手術が必要となります。一般にそけいヘルニア(脱腸)と陰嚢水腫をはっきり区別することは難しいようであり、赤ちゃんのそけい部や陰嚢が腫れている時は一度受診をお勧めします。

停留精巣

精巣は陰嚢内ではじめから出来るのではなく、胎児のときは腎臓の近くにあり、妊娠の5ケ月頃から徐々に下降しはじめ、妊娠8ケ月頃に陰嚢に入り固定されます。 これが何らかの原因で妨げられると、生まれてきた時、陰嚢に精巣を触れないことになります。この状態を停留精巣といいます。
一口に停留睾丸といっても下降の程度は様々で、全く降りずお腹の中に留まっているもの、途中のそけい管というトンネルの中にあるもの、恥骨付近に触れるもの、時々陰嚢に降りることがあるものなどがあります。睾丸を家庭で検査する場合はお風呂のなかでリラックスした状態で、できれば立たせて左右の陰嚢を触ってみるとよくわかります。 もし停留精巣で生まれてきても、およそ半年は精巣が降りてくる可能性がありますからすぐにあわてる必要はありません。
しかし陰嚢内にない精巣の発育は悪く、降りてくる傾向が無ければ早めに手術が必要です。手術を行う時期は、精巣の下降の程度や発育状態によって異なりますが、全く陰嚢内におりてない場合は1歳半から2歳頃までに行うのがよいようです。いずれにしても精巣を陰嚢内に触れないようであれば、乳児であっても専門医に相談することをお勧めします。

包茎

包茎とは陰茎の先の部分(亀頭)がまわりの包皮で覆われ、オシッコのでる尿道口が全く露出していない状態をいいます。この中で包皮を下にひきおろすと尿道口が現れる場合を仮性包茎、包皮が輪状になっていて反転しない場合を真性包茎と区別しています。 赤ちゃんはほとんどがこの仮性包茎であり、さらに亀頭と包皮が引っ付いていますが、1歳頃には反転するようになるものです。
しかし、オシッコの時に包皮が風船のように膨らんだり、包皮が赤く腫れ上がり、出血したり膿みが出たりする場合は治療の必要があります。最近ではステロイド軟膏の塗布で包皮が反転できるようになる時があります。
効果がない場合は、手術が必要となることがありますが、気になるようでしたら受診をお勧めします。

肥厚性幽門狭窄症

赤ちゃんが飲んだミルクは食道を通って胃に入りますが、この胃の入り口を噴門、出口を幽門といいます。生まれてすぐの赤ちゃんが、おっぱいを飲んだ後にだらだらとミルクをもどすのは、噴門がまだ未熟で緩い為に起きるもので吐く量も少なく、体重の増加についても特に問題はありません。
しかし幽門狭窄症とは、生まれて間もなく胃の出口である幽門の筋肉が厚くなり、ミルクの通り道がつぶされてしまい、その結果ミルクは胃から十二指腸へほとんど行かなくなってしまうという病気です。一般には生後2週間頃から、始めはだらだらとした溢乳ですが、次第にあたかも噴水のように口と鼻から噴き出すような吐きかたになって、 回数も多くなってきます。吐いた後も赤ちゃんはケロッとしてまたミルクを欲しがりますが、次第におしっこやうんちも少なくなり、体重も減少してきます。おなかは胃拡張とぜん動運動により波打つようにみられます。
このような症状が現れたら早めに小児科に相談する必要があります。初期の頃は嘔吐を抑える薬を飲ませて様子を診ることもありますが、症状がどんどん進行していくようであれば、手術をしてミルクの通りをよくする必要があります。手術後は翌日から飲めるようになり、ほとんど吐かなくなり体重も増え、元気を取り戻します。この病気は一生のなかでこの時期にしか起きない不思議な病気で、男の子に多く原因は分かっていません。

腸重積症

これは赤ちゃん特有の病気であり、まったく元気であった赤ちゃんが、突然激しく泣き、顔色が青くなることで始まります。これは小腸の一部分が大腸に入り込むことによって起こり、どんどん進んで行きます。この為、入り込んだ腸が締め付けられ、血の巡りが悪くなって出血し、いずれは腸が腐って破れてしまうことになります。
他の病気と違って、間隔をおいて繰り返すことが特徴的であり、ときには全くケロッとしていることもあります。そのほかに吐いたり、いちごジャム様の血のついた便がみられます。
治療は症状がでてから24時間以内であれば、おしりから造影剤を注入して圧を加えることで治ることもありますが、整復できない場合は手術が必要となることがあります。

虫垂炎

いわゆる「盲腸(もうちょう)」と呼ばれているのが虫垂炎です。正確には小腸と大腸の間にある盲腸から伸びる小指ほどの長さの虫垂というところに糞石という堅い便が詰まったり、壁が腫れて内腔を閉塞してしまったりすることで、虫垂の先端が化膿する病気を虫垂炎といいます。年長児に多いですが、全年齢に起こる可能性があります。
典型的な症状としては、みぞおちの違和感から続く右の下腹部痛や嘔気・嘔吐、食欲不振や発熱、下痢などがあります。症状が多彩なこともあり、病院を受診して、ただの腹痛ということで腸炎などとして見逃されることも少なくありません。
こどもの虫垂の壁は大人と比べて薄いので、炎症が進行すると虫垂壁が破れ(穿孔)、腹膜炎になることがあります。場合によっては、緊急手術が必要な状態になることがある病気です。

胆道閉鎖症

赤ちゃんが飲んだミルクが胃に入り、十二指腸に流れると、消化を助けるために肝臓でつくられた胆汁(たんじゅう)が胆管を通って十二指腸に流れます。胆管が先天的に詰まって胆汁が流れなくなる病気が胆道閉鎖症です。
生後数ヶ月以内に皮膚や白目が黄色くなったり、白っぽいうんちがでる症状で気付かれます。時にはお腹の右上に硬く肝臓が触れることもあります。放っておくと、肝臓が硬くなり、生命を脅かすことがある病気です。
この病気は早くみつけて、手術をすることが必要です。生まれて数ヶ月の間は赤ちゃんの皮膚や目の色、うんちの色をみてあげてください。うんちの色は母子手帳に表がのっていますので参考にしてください。

その他の疾患

日常よく見られる疾患

臍ヘルニア、 胃軸捻転症、 習慣性便秘、遺糞症、肛門周囲膿瘍、乳児痔瘻、見張りいぼ、陰唇癒合、水腎症、膀胱尿管逆流症、尿道下裂、
腹部外傷:腎損傷、脾破裂、肝損傷、消化管穿孔、
異物誤飲:食道・胃内異物、消化管異物

新生児対象疾患

食道閉鎖症、ボボダレク孔ヘルニア、特発性胃破裂、十二指腸閉鎖症、腸閉鎖症、腸回転異常症、卵黄腸管遺残症、尿膜管遺残症、壊死性腸炎、胎便性腹膜炎、胆道閉鎖症、ヒルシュスプルング病、鎖肛、臍帯ヘルニア・腹壁破裂、膀胱外反症

小児がん対象疾患

神経芽腫、腎芽腫(ウィルムス腫瘍)、肝芽腫、膵芽腫、奇形腫群腫瘍、横紋筋肉腫、悪性リンパ腫

その他手術対象疾患

頸部(くび)
正中頸嚢胞、側頸瘻(嚢胞)、梨状窩瘻、リンパ管奇形、血管奇形

胸部(むね)
漏斗胸、気管支原性嚢胞

呼吸器
嚢胞性肺疾患、先天性気管狭窄症、喉頭・気管軟化症、気道内異物肺分画症、肺気道奇形

横隔膜
横隔膜ヘルニア、食道裂孔ヘルニア、横隔膜挙上症

消化管(おなか)
胃食道逆流症、食道狭窄症、食道アカラシア、食道異物、 胃潰瘍、メッケル憩室、腸管重複症、クローン病、潰瘍性大腸炎、腸管ポリープ、腸間膜嚢腫、消化管出血

胆道系疾患
門脈圧亢進症、胆石症

臍(へそ)
臍炎・臍肉芽腫、尿膜管遺残症

泌尿器(ひにょうき)
水腎・水尿管症、膀胱尿管逆流症、精巣捻転症、嚢胞性腎疾患、尿道下裂、尿路結石症、尿道狭窄症、プルンベリー症候群、水子宮膣症、卵巣嚢腫、卵巣捻転

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